映画業界人が選んだ「歴代で一番好きな映画」

トップ10

順位 作品名、年、動画 内容・解説
1 ゴッドファーザー

(1972年)

ゴッドファーザー

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【 監督 】 フランシス・フォード・コッポラ
【 出演 】 マーロン・ブランド, アル・パチーノ

【アカデミー賞】
受賞:作品賞、主演男優賞、脚色賞
ノミネート:監督賞、助演男優賞(3人)、作曲賞、編集賞、録音賞、衣装デザイン賞、有望若手男優賞

マフィアの世界の「悪」に「家族愛」を重ね合わせた愛憎劇。

米国の裏世界を一世紀以上にわたって描いた。パート1(72年)、パート2(74年)はアカデミー賞最優秀作品賞など多数を受賞。パート3(90年)で完結。アル・パチーノ、ロバート・デニーロ、アンディ・ガルシアなど、多くの俳優を世界の舞台に押し上げた。

マフィア一家3代の営々たる歴史をフランシス・コッポラ監督が描いた大作。PART3まで作られた。第1作は、ドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の三男マイケル(アル・パチーノ)が、敵に襲撃された父親の負傷をきっかけに後を継ぐまで。 ニーノ・ロータの甘美なテーマ曲も有名。

濃密な人間ドラマである。オーケストラのように人間たちがうごめき、輻輳(ふくそう)し、ぶつかりあって一つの音楽を織りなす。 米暗黒街を支配するシチリア島出身のマフィアの首領(ドン)たち。その一人、ビト・コルネオーネ(マーロン・ブランド)は持ち前の豪胆さと知力で一家を成し、“ゴッドファーザー”の座について権力の絶頂をきわめる。

しかし、麻薬密売をめぐって他のマフィア・グループと血みどろの抗争に巻き込まれ、自身も銃撃を受けて重傷を負う。大学卒のインテリである三男マイケル(アル・パチーノ)は父のかたきを討ち、やがて二代目として成長していく。

印象的なのは、ドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)が幼い孫と遊びながら、炎天下の畑で静かに息を引き取るシーン。時は流れる。一つの命が滅び、新しい命が輝き始める。切なくも、素晴らしい場面だ。

原作は、マリオ・プーゾーの小説。2000万部を超える大ベストセラーとなった。

もともと期待された作品ではなかった。配給元であるパラマウント映画は、その前年に製作したカーク・ダグラス主演のマフィア映画の大失敗にうんざりしていた。『ゴッドファーザー』がいくら大ベストセラーの映画化とはいえ、製作費は百万ドルそこそこに抑えたかった。

そんな低コスト映画では大物監督はだれも引き受けない。『俺たちに明日はない』を監督したニューシネマの旗手、アーサー・ペンにも断られた。思案の末にパラマウント映画が白羽の矢を立てたのが、当時三十三歳のイタリア系若手監督だった。

コッポラはそれまで、三作ほどの映画を手がけていたが、どれ一つとしてヒットしていなかった。低コスト映画という条件には好都合である。当時のパラマウント映画の最高幹部、ロバート・エバンスは初めてコッポラに会ったとき、思わず口走ったそうだ。

「スパゲティのにおいがするみたいだ」。ずいぶんとぶしつけな言葉のようにも響くが、エバンスはイタリア的感覚がほとばしるコッポラなら、うまくいくんじゃないかと思ったのである。事実、コッポラの個性こそ、パラマウント映画に大きな利益をもたらす『ゴッドファーザー』の原動力となった。

暴力、惨殺シーンが批判を浴びた。その後の暴力映画に比べれば、おとなしいものだが、当時は大きな衝撃だった。製作段階からアメリカ社会で拒絶反応を引き起こした。イタリア系市民団体がパラマウント映画に対しボイコット運動を宣言し、当時のニューヨーク州知事マリオ・クオモはマフィア賛美の映画として「私の子供には見させない」と表明している。

ところが、こうした反応をよそに、『ゴッドファーザー』が封切られると、映画館に押し寄せる人々が徐々に増えていった。当時の入場客の分析調査は、とくにイタリア系アメリカ人を含むエスニック・グループ(少数民族集団)が殺到したことを示している。

コッポラ監督による三部作の主眼は、現実のマフィアの非情さや、権力闘争そのものにあるわけではない。イタリア系米国人ならではの濃密な家族愛、憎しみの振幅や、後の世代の恋愛、父権、贖罪(しょくざい)意識などを通して、壮大かつ上質な叙情詩に仕上げたのだ。

興行収入で記録的なヒット作となった。アカデミー賞の作品賞を受賞し、「もはや過去のスター」と悪口を言われていたマーロン・ブランドは主演男優賞に選ばれている。コッポラ個人も、監督賞こそ逸したが、脚本(脚色)賞を獲得した。

本物のイタリア系アメリカ人であるコッポラがこの映画のメガホンをとると分かったとき、有名、無名のイタリア系アメリカ人俳優が『私を使ってくれ』といって続々と志願してきたという。

出演者リストをみると、シチリア島からの移民の子であるアル・パチーノを筆頭にイタリア系アメリカ人がずらりと並んでいる。実はロバート・デ・ニーロはビト・コルレオーネ役を熱望したが、果たせなかった。彼は次の『ゴッドファーザー パート2』(1974年)で若いころのビトを演じ、アカデミー助演男優賞を獲得して宿願を果たしたほどだ。(中津孝吉/naoyakiyohar5)
オズの魔法使

(1939年)

オズの魔法使

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【監督】ビクター・フレミング
【出演】ジュディ・ガーランド、レイ・ボルジャー

【アカデミー賞】
受賞:作曲賞、歌曲賞
ノミネート:作品賞、美術監督賞、撮影賞、特殊効果賞

ライマン・フランク・ボームが1900年に発表した「おとぎ話」が原作。 1925年にも映画化されているが、本作はそのミュージカル版である。後に『ウィズ』(1978)、『オズ』(1985)も作られているが、やはり『オズの魔法使』を越えるものではない。

本作のトリック技法やセットは絶賛された。 奇抜なファンタジーの世界ながら、登場人物のすべてが人間によって演じられている。 このため、アニメーションには見られない親しさや楽しさがある。さらにその底に流れるヒューマニズムが見る者の心をなごませる。

監督は『風と共に去りぬ』(1939年)のビクター・フレミング。

17歳の少女スター、ジュデイ・ガーランドの出世作ともなった。彼女はアカデミー賞の特別賞を与えられ、スターへの道を歩む。主題歌の「虹の彼方に」は、映画音楽のスタンダード・ナンバーになった名曲であると同時に、ジュディの愛唱歌にもなった。

【ストーリー】主人公の少女ドロシー(ジュディ・ガーランド)は、米国カンザスの農場で、伯父らと暮らしていた。ある日、大竜巻に吹き上げられ、落ちたところは魔法の国オズ。ドロシーはそこで脳なしカカシ(レイ・ボルジャー)、心のないブリキ人形(ジャック・ヘイリー)、弱虫ライオン(バート・ラー)に会う。そして、彼らを従者にして苦難の旅を始める。旅の終わるころには、それぞれ、頭脳、優しい心、勇気を得ていたことを悟る。
市民ケーン

(1941年)

市民ケーン

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【監督】オーソン・ウェルズ
【出演】オーソン・ウェルズ

【アカデミー賞】
受賞:脚本賞
ノミネート:作品賞、監督賞、主演男優賞、ドラマ音楽賞、録音賞、美術監督賞、撮影賞、編集賞

オーソン・ウェルズが25歳で初めて監督した商業映画。主演も自ら務めた。 1941年製作ながら、日本公開は1966年。 脚本、映像、演出など、さまざまな面から絶賛されている。 映画史上、最高傑作の一本と評価されている。

アメリカの新聞王、チャールズ・フォスター・ケーン(ウェルズ)の波乱に満ちた人生を生々しく伝える。  数多くの新聞社を所有し、政界への進出も企図したケーンだったが、スキャンダルを暴かれ挫折。死亡したときは、2度目の妻にも去られ、巨大な城のような建物で孤独に暮らしていた。

さまざまな顔を持つケーンとは、本当はどんな人間だったのか? 社命を受けた新聞記者トンプソン(ウィリアム・アランド)は取材を開始する。手がかりは、ケーンが死の直前に残した謎の言葉「rosebud」(バラのつぼみ)だった。  いくつもの劇的な出会いや別れが描かれる。莫大(ばくだい)な富を手にしても、心の底には幼いころ両親と別れた喪失感があり、独特の愛情表現は他人に理解されない。そんな主人公の悲しみが胸を打つ。

モデルとした実在の新聞王がおり、その系列メディアの攻撃を受けたことや、ウェルズ自身のその後の人生が、ケーンと同じように、すべてを得ながらそれを失っていくようにも見えることなど、映画の伝説を彩るエピソードも多い。

キネマ旬報ベスト・テン(1966年度)外国映画2位。長さ2時間。モノクロ。
ショーシャンクの空に

(1994年)

ショーシャンクの空に

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【監督】フランク・ダラボン
【出演】ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン

【アカデミー賞】
受賞:なし
ノミネート:作品賞、主演男優賞、脚色賞、作曲賞、録音賞、撮影賞、編集賞

映画史に残る感動ドラマ。 胸を打つ。

公開時はヒットしなかったが、 口コミで評判が広がった。 日本でも、多くの人が「生涯のベスト映画」と絶賛した。

主人公は若い銀行の副頭取。 いわばエリートだ。 彼は、妻とその愛人を殺害したという罪で終身刑の判決を受ける。 刑務所の職員による虐待。 他の囚人たちからの暴力。 ひどい目にあいながらも、 生き抜くために奮闘する。

主演ティム・ロビンス、助演モーガン・フリーマンのコンビも見事。 この2人が演じるキャラクターの友情物語も、大いなる感動を呼んだ。

フランク・ダラボンの長編デビュー作だった。 原作は、スティーブン・キングの小説。
パルプ・フィクション

(1994年)

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【監督】クエンティン・タランティーノ
【出演】ブルース・ウィリス、ジョン・トラボルタ

【アカデミー賞】
受賞:脚本賞
ノミネート:作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、編集賞

タランティーノ監督の最高傑作と評価されている。犯罪コメディ。 第47回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドール、第67回アカデミー賞脚本賞に輝いた。

無鉄砲なファミレス強盗、ボスの妻のお守りを仰せつかった殺し屋、中年の八百長ボクサーらの運命が、複雑に絡み合ったりすれ違ったりしながら予測不能の展開へとなだれ込む。時系列を前後させる構成も素晴らしい。
カサブランカ

(1942年)

カサブランカ

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【監督】マイケル・カーティス
【出演】ハンフリー・ボガート

【アカデミー賞】
受賞:作品賞、監督賞、脚色賞
ノミネート:主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、編集賞、作曲賞

ゴッドファーザー Part II

(1974年)

ゴッドファーザーPARTⅡ

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【監督】フランシス・フォード・コッポラ
【出演】アル・パチーノ、ロバート・デュバル

【アカデミー賞】
受賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞、美術賞、作曲賞
ノミネート:主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、衣装デザイン賞

E.T.

(1982年)

E.T.

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【監督】 スティーヴン・スピルバーグ
【出演】 ディー・ウォーレス・ストーン

【アカデミー賞】
受賞:作曲賞、視覚効果賞、音響賞、音響効果編集賞
ノミネート:作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、編集賞

スティーヴン・スピルバーグ製作・監督のSFファンタジーで、社会現象になるほど世界的に大ヒットした。

【説明】
子どもたちと異星人が交流する温かいドラマを、ジョン・ウィリアムズの名曲が盛り上げ、涙腺を刺激する。

名子役ヘンリー・トーマス扮するエリオットが、E.T.を乗せた自転車で、夜空を飛ぶという名シーンが印象的。(岩倉哲也)
2001年宇宙の旅

(1968年)

2001年宇宙の旅

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【監督】スタンリー・キューブリック
【出演】キア・デュリア

【アカデミー賞】
受賞:特殊視覚効果賞
ノミネート:監督賞、脚本賞、美術賞

SF映画の最高峰であり、ハリウッド映画の金字塔。 「究極の視覚体験」として、20世紀の人たちに衝撃を与えた。

「人類はどこから来て、どこへ行くのか」をテーマにしている。 キューブリック監督は、 アーサー・C・クラークの短編をもとに、 クラークに脚色を依頼し、 自らも加わった。

セリフはほとんどないが、 圧倒的な映像と音で魅了する。 ストーリーは難解。

キューブリック監督は完璧主義で知られる。 2年の製作期間のつもりで始めたが、実際には4年かかった。 そのキューブリックの映像へのこだわりが、SF技術を飛躍的に進歩させることになった。

有名な冒頭の「人類の夜明けのシーン」では、 「フロント・プロジェクション」という手法が、映画史上初めて使われた。

視覚効果を担当したのは、 後に「ブレードランナー」などを手掛けるダグラス・トランブルら4人。
10 シンドラーのリスト

(1993年)

シンドラーのリスト

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【監督】スティーヴン・スピルバーグ
【出演】リーアム・ニーソン、ベン・キングズレー

【アカデミー賞】
受賞:作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、美術賞、作曲賞
ノミネート:主演男優賞、助演男優賞、録音賞、メイクアップ賞、衣装デザイン賞

第二次大戦下のポーランドで、千余人ものユダヤ人を、死の収容所から救ったドイツ人、オスカー・シンドラーの物語である。実話だ。原作はトーマス・キニーリー。